マイケル・ハドソン「文明の命運」p.210

ロシア政府は、民営化する政府や欧米のベンチャーキャピタルが新規株式公開(IPO)で用いる通常の慣行に従えば、民営化からの収益を最大化することができたはずだ。つまり、民営化する政府や欧米のベンチャーキャピタルが新規株式公開(IPO)で用いる通常の手法に従えば、ロシア政府は民営化から得られる利益を最大化することができたはずだ。サウジアラビアがアラムコ株式の民営化に着手した際に行ったのは、これである。しかし、欧米のコンサルタントや証券会社は、ロシアに「自国を守るために、このままではいけない」と助言した。つまり、資産価格上昇に見合う利益(エコノミックレント)を新経営陣が出すのを待たず、苦肉の策として、資源会社や独占企業の新株式を一度に売却し、値上がり益のほとんどを米国人投資家に残すことを主張したのである。引受人は、自分たちの顧客であるマネー・マネジャーに、できるだけ多くのレント利回りの特権を手に入れてもらおうとした。

民営化論者や外国人投資家が最も欲しいのは、工業製品ではなく、原材料と不動産である。民営化された産業は、効率的な産業構造にするための投資によって得られる利益とは対照的に、手っ取り早く簡単に経済的なレントを得ることができる場所なのだ。ロシアの産業は解体され、ジョン・マケイン上院議員が「国を装ったガソリンスタンド」と呼んだような経済になり、その軍事的潜在力が損なわれた。この産業解体と土地や天然資源の売却は、まさに新自由主義の目的であり、欧米のファストバックの理想であった。

工場が閉鎖され、スクラップとして売却される一方で、旧ソ連は近代史上最大の不動産の芽生えを経験した。新しい住宅、オフィスビル、店舗、ホテルは、民営化業者や外国人のために建設されたのであって、一般の人々のためではなかった。雇用は激減し、ロシアは1990年代を通じて年間推定250億ドルの資本逃避に苦しみ、それは21世紀に入っても続いた。

ソ連の悲劇は、西側の新自由主義者が推し進めた大幅なリストラに代わる選択肢を、ソ連の指導者がイメージできなかったことにある。ソ連の指導者たちは、米国のアドバイザーが、ロシアを略奪し、地元の顧客寡頭制に支配された従属衛星にするのではなく、米国を繁栄させた資本主義のようなものを再現するのを助けると思っていたのである。彼らは、資本主義には様々な種類があること、そして米国の金融資本主義自体が1945年以降の大膨張の終わりに近づいていること、1980年代以降の新自由主義の受け入れによりその終わりが加速されていることを理解していなかった。

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忙しくて、「文明の命運」を1日1ページ訳すのがやっとという感じです。
明日は、朝6時出発でアヌラダプラへ行きます。
土日月とアヌラダプラで仕事。
月曜の夕方にキャンディへ戻る予定です。