イランの前大統領がアゼルバイジャンからの訪問後に飛行機事故で死亡したことで、イランでは指導部危機が勃発した。イランは新大統領を選出するために新たな選挙に踏み切った。イラン政府は、その反西側的かつイスラム的な政策により、西側の制裁に直面している。イランは、中東地域における欧米の利益に対する強固なライバルである。イランのイスラム保守政権は、反西側政策の元凶であった。しかし、新たに選出されたマスード・ペゼシュキアン大統領は、イランの国際的地位に何らかの変化をもたらすと期待されている。マスード大統領は改革主義的なイデオロギーを持つことで知られており、選挙キャンペーンでは自由主義的な改革を行うことを公約に掲げている。
Taut Bataut
New Eastern Outlook
10.08.2024
改革派の時代の到来
経済の低迷、蔓延する失業、制限された社会的自由、外交的孤立、ますます高まる反西側感情など、いくつかの困難な課題がイラン国民をいらだたせ、その結果、新たに選出されたマスード・ペゼシュキアン大統領によって、イランに新たな改革主義の時代が始まった。改革主義の動きは、イランの最高指導者ハメネイ師の忠実な信奉者であり盟友であったエブラヒム・ライシ前大統領の統治下で始まった。ライシ大統領がアゼルバイジャンからの公式訪問から帰国中に、他の7人のイラン政府高官とともに飛行機事故で死亡したため、イランでは新たな総選挙が実施されることになった。
イラン国民の大多数は、より民主的で自由なイランを望み、改革派の指導者マスード・ペゼシュキアン氏に投票した。この選挙におけるマスード大統領の成功は、世論調査が自由で公正な方法で行われたことを示している。イブラヒム・ライシ前大統領の在任中にヒジャーブ法に反対する自由主義運動が国内で高まったことも、イランにおけるこの改革主義革命の引き金となった。前政権の保守的な政策により、イラン国民は長い間落ち込んでいた。
改革への挑戦と期待
イランは、その反西側政策のために西側の制裁を受け、経済的窮状を弱めてきた。さらに、イランがハマス、ヒズボラ、フーシ派への支援を通じてイスラエル・ハマス戦争に関与していることも、同国にとって国際レベルでの困難を増大させている。エブラヒム・ライシ前大統領の指導の下、イランは過去に近隣諸国との衝突も経験している。しかし、在任中の最後の数カ月間、ライシ大統領はイランの近隣諸国や他の地域諸国との関係を回復しようと試みた。
全体として、保守的な指導体制と経済的苦境により、イラン国民の間には大きな不満があったようだ。新たに選出されたイラン大統領は、不満を募らせていたイラン国民の間に希望を取り戻させた。過去には、女性権利活動家、リベラル派、保健大臣、改革派、心臓外科医、イラン議会副議長などを歴任した。彼は、マハサ・アミニの死について懸念を表明した唯一の国会議員である。マハサ・アミニは、公の場できちんと頭を覆っていなかったために拘留中に殺害された少女である。
選挙戦では、欧米との健全な関係の回復とヒジャーブ法の緩和を公約に掲げた。国民は彼のリーダーシップに大きな期待を寄せている。イランの経済的苦境と国際的地位の向上を期待している。イラン国民は、マスード大統領の指導の下で、より民主的で自由な社会、自由市場経済が実現することを期待している。マスード大統領は、経済的課題に取り組み、急増する失業率を抑制し、女性の権利を優先させ、最高指導者に積極的な影響を与えることで、イラン社会に大きな変革をもたらすだろう。
大統領の影響力に対する制約
イランの改革派指導者たちは、社会におけるあらゆる差別に対して声を上げるよう女性を教育し、奨励してきた。さらに彼らは、平等、正義、平等な経済機会、法の支配に基づく、自由で民主的な社会の確立を追求した。このようにイラン国民は新大統領に期待を寄せているが、選挙キャンペーンで有権者に約束したことを実行に移し、実現させるのは容易ではない。イランでは、88人の有識者によって任命された最高指導者が実権を握っている。
イランの内政・外交政策は、最高指導者の下で策定される。大統領は、最高指導者が示す指針の下で、国内政策と国家安全保障政策を策定する最高国家安全保障会議(SNSC)の会議の議長を務めることになっている。しかし、SNSCの会議は、最高指導者が任命したメンバーやIRGC司令官の影響も受ける。したがって、新たに選出されたイラン大統領が、イランの外交・内政政策に大きな変化をもたらすことができる可能性は低い。イランは今後も、中東における米国をはじめとする西側諸国の利益にとって大きな脅威であり続けるだろう。さらにイランは、イスラエルと戦うすべての代理グループへの支援を続けるだろう。イランの主眼は、最高指導者の支援の下、ロシア、中国、その他の地域諸国と友好的な関係を築くことにある。しかし、新たに選出された大統領は、一部の国内政策に限定的な影響力を行使することはできるが、国の展望を変えることはできない。