北京は、イスラエルとその後ろ盾であるアメリカに対抗してグローバル・サウスの側に立つ好機を捉えた。この戦略は、米国主導の封じ込めに対する根深い恐怖に根ざしている。

Yang Xiaotong
Asia Times
November 2, 2024
世界的に、各国が経済面では中国に、安全保障面では米国にますます依存する傾向が強まっている。
当然のことながら、このことは多くの国々を板挟みの状況に追い込んでいる。中国と米国の大国間の競争にどちらの側につくことも望まず、これらの国々は傍観の立場に甘んじている。
イスラエルは、こうした国々のうちの1つではない。イスラエルに対して圧倒的な敵意を抱く国民に囲まれ、「7方面作戦」を展開しているイスラエルは、経済よりも国家安全保障を優先せざるを得ず、つまり、すべての卵をアメリカのバスケットに入れることを意味する。
まず、中国は中東において米国の役割を担う立場にはない。米国がイスラエルを明確に支援しているのは、両国間に「特別な関係」があるからだ。一方、中国はこのような「特別な関係」を共有しておらず、イスラエルを擁護する動機もない。
中国も米国と同様に、中東に「不沈空母」を置くことに興味を持っていることは間違いないが、それは依然として北京の優先事項リストのかなり下の方に位置している。現時点では、中国の優先事項は依然として東アジアにあり、すなわち、中国本土と「再統一」する必要がある裏切り者の省と見なしている台湾の奪還である。
地政学的な観点とは別に、中国の政治体制とユダヤ人の離散が存在しないという事実から、中国はイスラエルの影響を受けにくいという事情もある。また、中国がイスラエルを防衛する意思があったとしても、その能力はない。2012年の米国の「アジアへの回帰」政策以降、中国に対する地政学的な締め付けはますます厳しくなっている。
日本、インド、オーストラリアなど、中国を封じ込めるために各国がこぞって参加している。その結果、中国は世界最大の海軍力(艦艇数で)を誇るようになったが、公海を支配するにはほど遠く、その海軍力は依然として東アジアに縛り付けられている。この状況が変わらない限り、中国は他国に目を向けることはできない。
第二に、最近の動きは、中国が主張するほど公平ではないことを証明している。昨年10月7日にハマスが民間人に対して犯した残虐行為にもかかわらず、中国はハマスを非難することを避け、ハマスをテロ組織と認定することなどまったくなかった。
今日に至るまで、中国はハマスを批判の対象として取り上げることを控えている。「中国は民間人に対する暴力行為を強く非難する」というようなコメントは、ハマスだけでなく、ガザ地区の民間人に巻き添え被害を与えたイスラエルをも非難している。
ムスリム同胞団から派生したハマスは、アラブ諸国から必ずしも歓迎されているわけではない。ハマスを批判することに及び腰の中国は不可解である。
それは次の2つのうちのどちらかを意味する。中国はアラブ諸国の怒りを買うことを望んでおらず、何もしないつもりなのか、あるいは、ハマスがアラブ諸国だけでなく、戦前にハマスが統治していたガザ地区でも不人気であることを中国は認識していないのか、である。
理由が何であれ、結局のところ、10月7日の攻撃以降、中国が沈黙を保っていることがイスラエルをいらだたせ、中国=イスラエル関係は、一部の見方によると、過去最低レベルに急降下した。
中国は、主に通常のシナリオに従っており、すべての当事者に対して自制を求め、暴力の終結と、2国家解決策に基づく協議の再開を呼びかけているため、意図的にイスラエルを怒らせようとしているわけではないようだ。これは、中国が巧妙なバランス感覚を発揮していると考えていることを示唆している。
しかし、中国がガザ地区でのイスラエルの行き過ぎた行動を直接非難し始め、一方でハマスが犯した残虐行為については沈黙を守り、ハマスが犯した犯罪についてハマスを名指しで言及することは一度もなかった。これにより、中国はもはや中立ではないことが明らかになった。
ドナルド・トランプが大統領に就任して以来、米国は各国に中国との距離を置くよう働きかけている。しかし、ほとんどのグローバル・サウス諸国がイスラエルに反対する立場に転じたことが明らかになり、ガザ戦争をめぐる論争のさなか、米国がイスラエルへの「鉄壁の支援」を継続する方針であることが明らかになると、中国は米国に反撃する好機と見た。
過去において中国は、中東紛争から利益を得ることを優先し、イラン・イラク戦争の際にそうであったように、紛争の両陣営に武器を売却するほどであった。
今回、中国はどちらかの側につくことで、すなわち「グローバル・サウス」の流行に便乗することで、より多くの利益を得られると考えている。そのため、中国は米国の偽善を批判する機会を利用して、米国の世界的なイメージを損なっている。
一般的に考えられていることとは逆に、中国は米国と同じレベルではない。中国は米国よりも経済規模が小さく、軍事力も弱い。しかし、最も重要なのは、中国には米国のようなイデオロギー的な魅力がないということだ。
グローバル化から多大な恩恵を受けている中国は、米国が各国を自国との取引から引き離すようなことがあれば、中国は孤立した貧しい世捨て人のような国に戻ってしまうのではないかと恐れている。
そのため中国は、米国が反中連合を結成することを阻止したいと考えている。そして、最善のシナリオとしては、米国に対する共通の不満を持つグローバル・サウスやその他の国々を結集し、理論的には世界のパワーバランスを自国に有利な方向に傾けることを目指している。
現時点では、重要な場所ではうまくいっているようだ。例えば、サウジアラビアは最近、中国製武器の購入と中国からの投資を制限するようリヤドに圧力をかけることを目的とした米国との防衛協定の締結を、事実上拒否した。
米国が中国を孤立させることができない限り、イスラエル(その領土、経済、人口はグローバル・サウスに比べればはるかに小さい)が砲火に巻き込まれたとしても、中国にとってそれが何だというのだろうか?