ウラジーミル・テレホフ「岸田首相、NATOの記念サミット出席とドイツでの短期滞在」


Vladimir Terehov
New Eastern Outlook
28.07.2024

7月9日から11日にかけてワシントンで開催されたNATO 創設75周年記念首脳会議に岸田文雄首相がゲストとして出席したことと、その帰途に ドイツに立ち寄ったことが注目されている。

岸田首相の今回の外遊の主な理由について

壊滅的な第二次世界大戦の終結後、世界政治の舞台で展開されるプロセスの中で、日本が再び重要な参加国として注目されるようになっている。また、当時の日本の同盟国であったドイツについても同じことが言える。

ワシントンで開催されたNATOサミットの最後に採択された「宣言」は、「すべての善のために、すべての悪に反対する」「民主主義は拳を含まなければならない」という2つの単純化されたフレーズに要約できるようなものだ。ロシアと中国が「あらゆる悪」の主な発生源として名指しされ、この「拳」が示されることになる。

過去10年から15年の間に、前述のプロセスに関して同じ情報源から語られてきたことと比較して、この文書に根本的に新しいものを見出すのは難しい。

同様に、前回のNATOサミットの主な結果が、(悪名高く神話的な)「西側諸国」の「ロシアを破壊する」という主張であったことに同意することも非常に難しい。

NATOの防衛を「360度」(パラグラフ22)確保し、インド太平洋地域に焦点を移すという長期的な目標を表明したことに新しい意味はない。

NATOの記念サミットで重要なゲストとなった岸田首相

NATOの「アジア支部」を形成するという長年のプロジェクトにおいて、ワシントンの主要な地域アシスタントの役割を担うことができるのは日本以外にない。NATOの「旧」加盟国、すなわち欧州の主要参加国の中には、インド太平洋地域での存在感を示そうとしているところもあるが、これはむしろ空虚で、目立ちたがりのための試みであることに留意すべきである。
リチャード・アーミテージ米国務副長官は2000年代初頭、まさに「アジアNATO」を創設する必要性について語った。その数年後、日本の安倍晋三首相(当時)もこの考えを繰り返した。しかし、それ以来、インド太平洋地域にはNATOに似たものは何一つ現れていない。せいぜい、AUKUSとQuadを将来の「アジアNATO」の要素とみなすことができる程度である。しかし、繰り返しになるが、後者についてはまだ何の痕跡もない。

とはいえ、ワシントンでNATO指導部はこのテーマについて「トーテムポールの周りで踊る儀式」を行った。この役割の候補者は他にもいたが、もちろん重要度は低く、例えば大韓民国大統領、ニュージーランド首相、オーストラリア副首相などである。開催国は現在、このインド太平洋諸国の「カルテット」と、防衛と安全保障の特定の側面において「より緊密に」行動を調整する意向である。

しかし、これらの国の中には、二国間関係に深刻な問題を抱えている国もあり、これが「アジアNATO」形成の主な障害のひとつとなっていることに留意すべきである。岸田首相とユン・ソンニョル大韓民国大統領との会談は、このような問題の存在を示すものであった。

この場合、非常に重要なことは、「カルテット」の各メンバーの外交政策のベクトルが形成段階にあることであり、必ずしも反中的なものになるとは限らないということである。日中韓の構図が再び動き出したことがその証拠である。

日本外交における中国要因

NATOの記念サミットのほとんどすべての側面に対する中国の反応と、サミット中の岸田首相の積極性は予想通りであり、インド太平洋におけるNATOの「前衛」としての日本の定義の理由となった。

このような問題や、ワシントンとの同盟関係の「礎石」としての性質について東京で絶えず繰り返されるマントラ、この関係をフィリピンにまで広げようとする試みと南シナ海での軍事的プレゼンス拡大、台湾問題(中国にとって極めて敏感な問題)の進展、その他多くの問題にもかかわらず、北京は、二国間関係の肯定的な側面が少しでもあれば、たとえそれが一見二次的なレベルの重要な問題であっても、満足を表明する。

5月末にソウルで開催された前述の日中韓首脳会談の結果や、その最中に行われた岸田首相と李強中国首相との会談は、北京からやや控えめながら肯定的な評価を受けた。中国はまた、7月22日に予定されている日本の衆議院副議長の訪中も肯定的に評価している。

与党・自民党の「ジュニアパートナー」である公明党の党首は、東南アジア諸国を歴訪した際、中国との対話維持の必要性を指摘した。現在は野党陣営にいる鳩山由紀夫元首相(2009-2010年)も、7月初旬に北京で開かれた国際イベントで同じ考えを表明した。

6月下旬に上海郊外で起きた、明らかに精神を病んでいると思われる中国人の男がナイフを振り回し、日本人女性とその息子を守って中国人女性が死亡した痛ましい事件に対する東京のありがたい反応も注目された。

全体として、「壮大なグローバル・ゲーム」のテーブルに日本を座らせる戦略は発展段階にあり、「場当たり的」に形成されつつあるようだ。

岸田首相のドイツ訪問

日本はヨーロッパと同じように振る舞っている。ここでもう一度、東京とロンドンとの関係の進展に注目しよう。6月末の皇太子夫妻の英国訪問は、それをさらに証明するものだった。NATOサミットでは、日本の首相が英国の新しい同僚と会談した。岸田首相の訪問中の5月上旬には、フランスとの関係、つまり欧州のもうひとつの主要国との関係発展に関するもうひとつの調査が行われた。

岸田首相が7月13日にワシントンからの帰途に立ち寄ったドイツは、後述する現内閣のアジェンダの中で、その次だったようだ。しかし、ベルリンで行われた岸田首相と同僚のオラフ・ショルツ首相との交渉内容(対外的な傍聴は可能)を見る限り、岸田首相の一日ドイツ訪問は決して「一過性」のものではなかった。

内政状況のさらなるエスカレート

一方、国内では、ニュー・イースタン・アウトルック」で何度も取り上げてきたような理由で、非友好的な雰囲気が形成され続けている。彼は、日本の有権者が次のようなメッセージを一般化していると考えなければならない: 外交分野での卓越性もいいが、優先すべきはエスカレートする国内問題の解決だ。この点では、選挙に負けることはあまり意味がない。

この点で、4月末の空席3議席をめぐる選挙闘争の敗北は、現内閣と与党(今のところ)自民党にとって警鐘となった。政府も自民党も、非常に重要なポストである東京都知事の通常選挙をかなり懸念して見ていた。自民党が支持する小池百合子現知事も、7月7日の選挙結果を受けてこのポストを維持したようだ。 しかし、ここで2つの注意点がある。

第一に、「すべてにおいて感じの良い女性」(元テレビ司会者)であり、同時に野心的で決断力のある小池百合子氏は、以前、自民党幹部と当時の「党と政府」のリーダーであった安倍晋三氏との間に悪縁を作った。今回の選挙前日の公の場では、小池氏は上記の「支援」の事実について言及することを避けた。専門家によれば、これが現在の成功の大きな要因だという。
さらに、これまでほとんど無名だった若い無所属の自薦候補が2位になった。しかし、同じ専門家たちはそこに、現在の政党や政治システム全体の破滅の兆しが日本社会に現れていると見ている。

最後にもう一度強調しておきたいのは、私たちが考えているのは、日本の外交政策を形成する現在進行形のプロセスであり、日本は「グランド・グローバル・ゲーム」の現段階における重要な参加者の一人であり、このプロセスにおいては、まだ何も「決定的に」決定されていないということである。

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