ウクライナの無人機によるロシア領内攻撃におけるNATOのリスク

一歩間違えれば、ウクライナ戦争はたちまちNATO全体の戦争に発展しかねない。

Stephen Bryen
Asia Times
August 31, 2023

8月29日、ウクライナはエストニア国境に近いプスコフ飛行場への攻撃を含む、これまでで最も大規模なドローンによるロシア領土への攻撃を開始し、少なくとも2機、おそらく4機ものIl-76ジェット輸送機が破壊された。

Il-76は大型の多目的固定翼4発ターボファン戦略用エアリフターで、特殊任務用に構成することもできる。部隊や物資の輸送に使用されるロシア空軍の主力機である。

この航空機は1971年から生産されており、現在も製造されている。Il-76はロシア国内外の民間組織でも運用されている。この航空機は、さまざまなバージョンで十数社の外国のオペレーターに販売されている。

プスコフ攻撃の意義は、ロシア北西部にある飛行場の位置にある。この飛行場はエストニアの国境ポスト、ルハマアから38.1マイル(61.3キロ)離れている。プスコフはウクライナ領から500マイル(800キロ)ほど離れているため、今回の攻撃でドローンがどこから発射されたのかについて重大な疑問が投げかけられている。

ドローンが長距離で活動するためには、特別な通信機能が必要だ。RQ-4グローバルホーク、RQ-1/MQ-1リーパー、RQ-170センチネルを含むアメリカの無人機は、衛星通信と無線中継を使用している。

リーパーのような無人機は空対地ミサイルを搭載し、非常に高度なレーダーと電気光学装置を備えている。ウクライナはこのような無人偵察機を持っていない。

ロシア側は、プスコフに発射された無人機は、ロシアかベラルーシ領内、あるいはエストニアから密かに発射されたものだと考えている。ドローンがロシアに密輸されたことを示唆するような攻撃は、ロシア領内の奥深く、モスクワの近くでも行われている。

ウクライナ人はまた、ウクライナのロシア占領地でも行っているように、ロシア領内でもしばしばロシア人を巻き込んだ破壊工作を行っている。

ロシアの報道機関は、犯人を捕まえない限り、ロシア国内の攻撃に関する情報をほとんど提供しない。しかし、ソーシャルメディアはロシア国内で攻撃を受けた場所の写真やビデオを提供している。

軍事標的を狙った破壊工作もあるが、オフィスビルやショッピングモール、倉庫といった標的も多い。ロシアの国内治安は、破壊工作を阻止することも、その頻度を減らすこともできないようだ。

ドローンによる攻撃や破壊工作が、ウクライナ領内での戦争の軌道を大きく変えることはないだろう。むしろウクライナの目的は、ロシアの防衛が脆弱であること、ロシア当局が国内の重要資産を守る能力がないことを示すことで、ロシアに不和をもたらすことにあるようだ。

加えて、ウクライナはプーチン大統領政権に本気で反対していることを示したいため、挑発行為にロシア市民を利用している。

ウクライナのロシアへの攻撃は、ロシアがウクライナの民間インフラを攻撃することへの見返りとしても意図されている。8月29日にウクライナ側がロシアに対して最も激しい無人機攻撃を開始したのと時を同じくして、ロシア側はキエフに対して激しい砲撃を行った。

ウクライナのドローンや破壊工作には、ウクライナのNATOパートナーに懸念されるリスクがいくつもある。プスコフの攻撃のように、脆弱なNATO諸国の近くを攻撃すれば、国境を越えた反応を引き起こし、NATOを巻き込んだより大きな紛争の火種になりかねない。

ロシアは最近、ドナウ川沿いのウクライナのイズマイル(イズマイル)穀物倉庫と港を攻撃した際、大きなリスクを冒した。対岸にはルーマニアがある。

ロシアは間違いなく、国内の安全保障を向上させる努力を強化し、ドローン攻撃に対処するための防衛システムを追加するだろう。

しかし、ウクライナはロシア国内の標的の選択に注意しなければならない。特に、ウクライナは核兵器が保管されている施設やロシアの戦略機が配置されている場所には近づかないようにしなければならない。

また、ロシアがNATO加盟国からの直接攻撃と解釈する可能性のある攻撃にも注意しなければならない。一歩間違えれば、ウクライナ紛争はたちまちNATO全体の戦争に発展しかねない。

スティーブン・ブライエンは、安全保障政策センターおよびヨークタウン研究所のシニアフェローである。本記事はWeapons and Strategyに掲載されたものです。Asia Timesは許可を得て記事を再掲載している。

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