マイケル・ハドソン「文明の命運」p.254

米国の貿易外交官は、中国が米国の工業化を阻害していると非難している。しかし、仮に中国が存在しなかったとしても、米国がかつての産業支配力を取り戻す方法はほとんどないように思える。クリントン政権が1994年にメキシコ、カナダと結んだNAFTA、そして2001年に中国をWTOに招聘した目的は、米国の製造業を賃金の安い国々にオフショア化することだった。教育、医療、その他の基本的なインフラを民営化し、さらに借金による不動産バブルによって、米国の生活コストは非常に高くなり、産業界の雇用主は雇用と生産を海外に移すしかなくなったため、脱工業化は必然だった。

米国が、19世紀のアメリカン・スクールの公共インフラ投資政策を否定し、投資と経済的リターンをレンティア層とその独占企業が支配する「市場」に委ねたのは、中国のせいとは言い切れない。しかし、官民混合の産業経済の必要性は、米国でも再び認識されつつある。2021年5月27日、米下院は470ページに及ぶ法案「Ensuring American Global Leadership and Engagement Act (EAGLE)」を可決した。米国の経済界に支えられ、上院はこの産業界への公的補助金を後押しする動きを見せた。ニューヨーク・タイムズ紙は次のように要約している。

イデオロギーの正統性は、中国がファーウェイのような「ナチュラル・チャンピオン」にどのように資金を提供しているかという現実に押し流された。ファーウェイは電気通信の巨人で、世界各国に北京へトラフィックを戻すことができる5Gネットワークを配線している。... 保守的なテキサス州の共和党員で、過去に政府の産業界への資金援助に批判的だったジョン・コーニン上院議員は、半導体への資金援助について、「率直に言って、中国は我々にこれらの投資を行う以外の選択肢を与えなかったと思う」と述べている。

この法案は、フランスのエアバス社や中国のファーウェイ社など、民間企業に対する政府の補助金にアメリカが反対してきた数年後に、支持を集めている。業界団体Consumer Technology Associationの国際貿易担当副社長であるSage Chandler氏は、「我々は、中国と彼らの悪い産業政策を罰しようと試みている」と述べた。「しかし、皮肉なことに、私たちは中国を罰し、その後、多くの方法で中国が行っていることをそのまま真似し始めたのです。」