ティモフェイ・ボルダチョフ「『イランをおびき寄せようとしたイスラエル』ーなぜ失敗したのか」

テヘランの戦略の非直線性が、イランとの関係を特に興味深いものにしている

Timofey Bordachev
RT
7 May, 2024 20:24

イランで最も印象に残るのは、公共生活のほとんどあらゆる側面に付随するパラドックスである。一方では、街頭の秩序や宗教上の義務の遵守について、国家はかなり厳しく監視している。その一方で、過剰な治安対策はない。むしろ、もっと強化してほしいと思うこともある。例えば、空港では人の移動が恣意的であるため、テロリストが容易に出入りできるような印象を与える。すべての外国人メッセンジャーの使用禁止は、VPNの普遍的な使用と組み合わされている。ほぼ半世紀にわたるアメリカとの対立(イランはアメリカ大使館すらない数少ない国のひとつである)は、エリートや学者が優れた英語を話し、海外の学術誌に頻繁に論文を発表することを妨げない。

この逆説はイランの外交政策に完全に内在している。イスラエルとの無人機やミサイル攻撃の応酬が小康状態にあった数日間をイランで過ごしたとき、それは明らかだった。一般的な印象では、テヘランは自分たちが達成した結果に完全に満足しており、この地域の主要な敵対国との全面戦争は望んでいない。外から見ればイスラエルへの不十分な対応に見えるが、イランの逆説的な論理からすれば、まさに最適なのである。過度のリスクを冒すことなく、外交問題を解決することができるのだ。中東での大規模な戦争がイスラエルを利するだけであることは、誰もが理解しているはずだ。テヘランにとって重要なのは、イスラエルが望むものを与えないことなのだ。

外交・内政政策に対するこのユニークなアプローチは、1979年のイスラム革命以来、この国が発展してきた特別な条件の結果である。その主な帰結は、1980年代から2000年代にかけて、アメリカとヨーロッパの同盟国が世界を支配していた絶頂期に展開された西側諸国との戦略的対立である。当初、テヘランの敵は、イラン・イラク戦争でサダム・フセイン政権を支援したソ連でもあった。このことは現地ではよく記憶されている。しかし、ソ連に対する態度がロシアに移っているわけではない。イランの戦略論理は、昨日の敵が今日の信頼できる友となりうることを容易に受け入れている。西側諸国との対立は、戦術的な取引の可能性はあるにせよ、世界観的な性格を帯びている。イラン国家は、米欧が誰に対しても否定するような内部決定を下す能力の上に成り立っているのだ。

イラン独立の代償は非常に大きい。まず第一に、私生活の制限に不満を持つ高学歴の若者たちが着実に流出している。また、多くの貧困層や、古い車と質の悪いガソリンの使用による都市部の大気汚染も含まれる。こうした課題への対応は、壮大な戦略としては当然のことだが、逆説的である。学生数の絶え間ない増加と、独自の研究所(主に自然科学分野)を持つ大規模な大学から成っている。イランは現在、国際協力を目的としたものも含め、教育プログラムが最も急速に成長している国であろう。

同時に、犯罪を犯していない限り、国外に出た人々の帰還を妨げる者はいない。海外在住のイラン人との共同研究も歓迎されている。また、自然科学を発展させようとするイランの一貫した努力は、やがて発展における経済的・技術的問題を解決することが可能になると信じるに足るものである。米国の封鎖と国連の制裁の下で、成果は少しずつ出ているが、独立をあきらめるという選択肢もあり、それはテヘランの計画にはない。

イランの外交政策を評価する際には、まず、この大国が数十年にわたり、多勢に無勢で孤独に、あらゆる困難と戦ってきたことを理解しなければならない。だからこそ、イランは、真の大戦略の持ち主を特徴づける逆説的な論理によって、他のどの国よりも特徴づけられるのである。戦術的なものであれ、今年1月のBRICSグループへの加盟のような大規模なものであれ、イラン当局が下したあらゆる決定は、まさにその現れとして評価されるべきである。この論理の中で行動を予測することはほとんど不可能だが、イランとの関係を興味深く有益なものにしているのは、まさにこの論理なのである。

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