Paul Craig Roberts
September 5, 2025
パブリックスの相次ぐ値上げで、コミュニティコーヒー12オンスは11ドルから13.60ドルに、グリーンフィールドの無添加ベーコン12オンスは7.99ドルから9.19ドルに値上がりした。シアトルズベストコーヒーは12オンスから10オンスに内容を減らすことで価格を維持した。 今日、家でサンドイッチの昼食を作るのにかかる費用は、1963年にロンドンのクラリッジズでグルメな夕食を食べるのと同じくらいだ。
現在、クラリッジズの1泊の宿泊料金は2,258ドルである。11月19日には1,874ドルに値下がりする。現在、クラリッジズの伝統的なアフタヌーンティーは1人あたり95ポンド(128ドル)からとなっている。 1963年、クラリッジズでチョコレートムースとヴィンテージポート付きの本格的な夕食をカップル2組(4人)で楽しむのにかかった費用は合計20ポンド(56ドル)だった。つまり1963年、4人が世界最高峰のレストランの一つでフルコースを堪能するのにかかった費用は、現代で1人がアフタヌーンティーを楽しむ費用の半分に過ぎなかったのだ。
今日私が参加した1963年当時の4人分の夕食代を想像することすらできない。バーの価格表を見ると、ふわふわのマルガリータ・ロイヤル1杯が、当時の4人分のグルメディナーより2ポンド高い。
現在の4人用最安ディナーメニューは360ポンドだ。当時の20ポンドと比べると、珍しい品は一切ない。チョコレートムースもない。ヴィンテージポートもない。今ではクラリッジスでさえ、シグネチャーバーガーが32ポンドだ。1963-64年当時、クラリッジスのディナーメニューにハンバーガーが載るなんてありえなかった。
アラカルトメニューなら、牡蠣、マグロのカルド、ホタテのセビチェ、コーンウォール産カニ、そして丸ごとのロブスターが185ポンド(250ドル)で選べる。これに前菜として生牡蠣半ダース(殻付き)32ポンド、アイスバーグレタスとアボカドのサラダ22ポンド、味噌がけ人参8ポンドを加えると、一人分の夕食代は247ポンド(336ドル)になる。4人分の今日の請求額は1,344ドルになる。1963年の56ドルと比べると、現在のディナーは1963年に私が食べたもの(1人あたり5ポンド)のレベルに達していない。ヴィンテージポートもチョコレートムースもない。
クラリッジズの現在のワインリストを確認した。メニューにヴィンテージポートは載っていない。ヴーヴ・クリコもドン・ペリニヨンもない。クリュッグ・グランキュールは1本450ポンド(605ドル)だ。どうやら石油シェイクや麻薬王でさえヴィンテージポートは手が出ないらしい。
レストランの価格をインフレの例として挙げたが、これについては後ほど詳しく述べる。この価格を維持しているのは英国人ではない。 アラブの石油王やアフガニスタンの麻薬カルテル、そしておそらく経費で賄うCIAやMI6の工作員が、これらの組織に潜入しようとしているのだ。この例は、クラリッジズでさえ提供できる夕食の質の低下だけでなく、富裕層以外には手の届かないものになっていることを示している。1963年から64年、私がクラリッジズを楽しんでいた頃、私はオックスフォード大学の奨学生で、妻と暮らしていた。今の状況と比べてみろ。
以前は経済やインフレについてもっと書いていた。だが読者に経済学は人気がないと気づいた。推測するに、大半が経済学は理解が難しいと考えていたからだ。さらに、自分たちは十分知っていると思い込んでいた。共和党にとって問題は、政府の支出が過剰で経済に過剰な債務負担を強いていることだった。 民主党にとっての問題は、富裕層が過剰な富を保有し、その多くを貯蓄に回すため、完全雇用を維持するのに十分な消費需要が経済に残らないことだった。一方の政党にとっての解決策は政府の縮小であり、他方の政党にとっての解決策は政府の拡大だった。
今日の私の経済学の教訓は、何十年も経済学者たちのインフレ説明に接してきたが、彼らが見落としている点が一つあるということだ。 インフレはウォール街と連邦準備制度、そしてメディアがその存在を宣言することで引き起こされる。インフレ宣言がなされれば、誰もが値上げの口実を得られる。これが現在のインフレ原因だ。利益を押し上げる手段である。例えばトランプの関税政策を根拠にインフレ宣言がなされれば、コミュニティコーヒーは11ドルから13.60ドルに、ベーコンは8ドルから10ドルに跳ね上がる。 有機卵は、なぜか産卵鶏だけを対象としたウイルスによる殺処分後も値下がりしなかった。有機卵は1個1ドルに迫っている。1ダース69セントだった頃を覚えている。
過去の論考で指摘した通り、労働統計局はインフレを過小評価する手法で測定している。失業率も同様だ。これらの数値は信頼性がほとんどない。それでも市場は偽りの数字の発表で動く。
これは蔓延している現象だ。株価を最も左右するのは、FRBの次なる利上げ・利下げ予想ではないか。FRBが利下げすると予想されれば株価は上がる。利上げすると予想されれば株価は下がる。株価は企業の健全性や収益実績ではなく、それを追い求める資金量で決まるのだ。
知識と教育の進歩が絶えず語られているにもかかわらず、なぜ現実の代わりに非現実がますます蔓延しているのか?
最近読んだ恐ろしい記事によれば、ビデオゲームに時間を費やす子供たちは仮想現実から現実世界への移行に困難を抱えている。おそらくこれは支配者層が意図する展開なのだろう。