「暗い底流」-緊張が緩和しても、台湾をめぐる中国との戦争に備える「アメリカ」

あからさまな好戦的言動はもはや台湾をめぐる言説を支配していないが、ワシントンは対決の準備を着々と進めている。

Timur Fomenko
RT
9 February 2024

2024年、米中間の緊張関係は今のところ穏やかだ。アメリカの選挙が予測不可能な形で迫っているにもかかわらず、ワシントンの政治はイスラエルとウクライナに集中しており、ジョー・バイデンと習近平がサンフランシスコで会談して以来、ワシントンと北京の間は比較的落ち着いている。

しかし、だからといって水面下で何も起きていないわけではない。米国は当面、中国とのハイレベルな対立を避けているが、北京を封じ込め、台湾をめぐる潜在的な戦争に備えようというワシントンの野心は相変わらず揺るがない。最近、アメリカは台湾が統治する金門島に特殊部隊を常駐させ、現地の兵士を訓練していると報じられた。

金門島は基本的に、正式には「中華民国」として知られる台湾がいまだに統治している「本土の一部」といえる最後の領土である。福建省の海岸からわずか20マイルほどの沖合に位置し、台湾自体から隔離されているため、特に毛沢東時代には、長年にわたって中国による台北への報復の標的となってきた。侵攻のシナリオでは、北京がまず金門島を占領し、金門島を足がかりにして第一防衛線とすることが予想される。

アメリカは1972年の中国との3つのコミュニケで、金門島に兵士を配置しないことを正式に約束したが、その過程で「独立を支持しない」と主張しながらも、さまざまな形で台北への軍事援助を拡大することで、一つの中国の原則へのコミットメントを徐々に損ないつつある。そうすることで、アメリカの戦略は、「現状維持」を支持し、「武力行使に反対する」と主張しながらも、北京の条件による統一を阻止することで、台湾に有利な方向にゴールポストを動かそうとしているのである。

民進党が台湾の立法院の支配権を失ったとはいえ、台湾の選挙で何度も勝利を収めたことで、これは非常に容易になった。それでも中国は、必要なら武力で統一を成し遂げると主張し、自国の軍事的プレゼンスと能力を高めて台湾に圧力をかけようとしている。それに対してアメリカは、パワーバランスの変化を抑え、征服が成功しても中国には大きな代償が伴うというメッセージを伝えようと、台北への武器売却を増やしている。

アメリカにとって、台湾を失う軍事的リスクはとてつもなく大きい。米国の台湾支持は「民主主義」という典型的なイデオロギー用語で伝えられているが、実際には、台湾の運命は最終的にアジア太平洋の覇権を握るのは誰かを決定する。というのも、台湾は日本列島から南シナ海まで続く「第一列島線」の重要な一部だからだ。台湾を支配する者は、中国周辺部の重要な航路をすべて支配することになり、軍事的にも日本を牽制することができる。それこそが、1895年に台湾が日本の最初の植民地となった理由である。

言い換えれば、もし台湾が失われれば、南シナ海も失われることになり、その結果、アメリカがこの地域で、そして中国そのものに対して軍事力を投射する能力も著しく低下する。このような結果が地政学的にもたらす影響は、アジアの近隣諸国が最終的に中国の支配を受け入れることを諦め、アメリカの役割が低下し、北京がその後、帝国中国の時代に見られたような独自の地域サブシステムを構築できるようになることである。こうして台湾そのものが、この地域の将来をめぐる象徴的な闘争となり、もちろん習近平の描く中国自身の台頭と復活という点では「運命」の問題となった。

したがって、米中間の緊張が以前ほど高まっていない現在でも、台湾問題は水面下でこのような動きを見せながら刻々と変化していくだろう。特に、より挑発的な独立派の頼清徳総統が就任しても、この問題に対するどちらの立場も変わらないと考えるべきだ。アメリカは、ナンシー・ペロシの台湾訪問のような極端な演出はもうしないかもしれないが、統一を阻止し、中国の野心を押しとどめるような形で、現状を少しずつ変えていこうと動き続けるだろう。北京は最終的にそれに対応せざるを得なくなり、直面するかもしれない結果を警戒しながら、どのように自らの手を打つか思案することになるだろう。

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