EU、農民の抗議の中で「食糧危機シミュレーション」を作成


Mary Manley
Sputnik International
10 March 2024

先月、ブリュッセルの中心部で2日間にわたり、欧州連合(EU)や政府関係者、食料安全保障の専門家、業界関係者、ジャーナリストら約60人が、食料危機の可能性に立ち向かうために会合を開いた。

新型コロナのパンデミック、見事に裏目に出た西側の対ロシア制裁、地政学的、気候的な問題による航路の寸断などが、価格の高騰を引き起こしている。そして今、人間による予測不能で破壊的な気候変動がこの問題をさらに悪化させ、ヨーロッパは本格的な食糧危機への備えを促している。

そこで2月初旬、プロジェクト・パートナーであるSciences Po、Prospero & Partners、Chatham House、European Policy Centre、INRAは、ブリュッセルの道路や街頭で農民たちが抗議デモを行う中、食糧危機のシミュレーションを行った。

シミュレーションの第一部では、参加者は「タスクフォース」のメンバーとして、食糧危機に対処するため、EU議員への政策提言を策定する仕事を任された。参加者は、危機対応メカニズム、農業・食料生産、貿易・金融の各グループに分かれた。

ワークショップが開催された同じ都市では、トラクターの車列に乗った農民たちが、爆竹や卵、ビール瓶を警察に投げつけて抗議する一方で、政治指導者たちに物価上昇や官僚的な規制からの救済を強く求めていた。また、ブリュッセルでの食糧シミュレーション危機の数日前には、ポーランドの駅で抗議者とデモ隊が160トンのウクライナ産穀物を鉄道車両から流出させた。

これまで、ヨーロッパは食料安全保障に関して羨ましい立場にあった。西側諸国は一般的に世界で最も食料に恵まれており、穀物や乳製品から豚肉やオリーブオイルに至るまで、世界最大の食料供給国のひとつである。2021年、EUの平均家計支出は14%であったのに対し、ナイジェリアでは約60%、エジプトでは40%であった。

しかし、天候や気候の変動は定期的に農家を直撃しており、農作物の栽培に必要な肥料やエネルギーのコストが高騰した結果、EUは2022年に500億ユーロ(543億ドル)以上の経済的損失を被る。

加えて、欧州の官僚たちによる政治的決定も食料価格の高騰の一因となっている。デンマークとスウェーデンは、米国が行ったとされるノルド・ストリーム妨害行為の調査継続を拒否し、これが欧州のエネルギー価格の高騰を引き起こし、農業と輸送のコスト上昇につながった。安価なロシアのエネルギーから遮断され、ロシアの企業や国家に協力する企業には制裁が課された。

そして今、欧州の農民たちはほぼ毎日のように反政府デモを起こし、事態を緩和するための断固とした行動を要求している。

シミュレーションでは、この危機は今後も続き、2025年には泥棒がスーパーマーケットから略奪する一方で、警察が都市部での暴動を抑えるのに苦労する光景が見られるだろうと予測した。一方、ドイツに住む人々は、食料品店で魚や肉を手に入れることができなくなる。

シミュレーションでは、備蓄の増強、最も食糧不安に瀕している人々への食糧供給、大豆のような農作物の輸入に過度に依存しているEUから脱却するための畜産農家への補助金削減などの解決策が取り上げられたという。このような官僚的な選択にすでにうんざりしている農家にとっては、おそらくありがたくない動きだろう。また、食生活を肉食からベジタリアンへと押し上げるべきだという全会一致の決定も紹介された。

しかし、参加者に食事と軽食が振る舞われたとされる2日間のワークショップだけでは、この長期的な問題に対処するには不十分だろう。

「私たちはこの3年間、危機の中で生きてきました。あらゆるレベルで、なすべきことはまだまだたくさんある。危機はより早く、より厳しくやってくるでしょう」と、ワークショップを共同主催した元米国外交官で、パリの世界食料政治学の非常勤教授であるクリス・ヘガドーンは言う。

1月末、食料システム経済委員会(FSEC)は、世界の食料システムを抜本的に見直せば、数兆ドル相当の利益を世界経済に取り戻すことができると報告した。

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