岸田首相と上川外相「国内情勢が不安定になる中、再び外遊」


Vladimir Terehov
New Eastern Outlook
19 May 2024

今年の4月から5月初めにかけて、日本は「グレート・ワールド・ゲーム」の現在の局面で特に活発な動きを見せた。これは、東京が(1945年の大惨事の後)世界的なゲームテーブルに復帰し、今日そこで起こっているすべてのことの最も重要な参加者の一人となっていることのさらなる証拠である。

4月前半の岸田文雄首相の訪米を思い出してみよう。この訪米には、日米首脳会談、日米フィリピン首脳会談といった画期的なイベントや、岸田外相による米議会上下両院合同会議での演説が含まれていた。

4月16日から20日にかけて、上川陽子外相は地中海のカプリ島で開催されたG7の閣僚級会合に参加した。上川外相は、G7メンバーとの共同行事に加え、G7メンバーそれぞれと個別に会談し、記者会見で記者と話し、質問に答えた。中東情勢とウクライナ情勢は、このイベントの参加者全員の最大の関心事であった。

その1週間後、再び外遊に出発し、アフリカ3カ国(コートジボワール、ナイジェリア、マダガスカル)とアジア2カ国(スリランカ、ネパール)を訪問した。続いて岸田文雄首相がフランス、ブラジル、パラグアイを訪問した(5月1日)。

現内閣が政権を担っている自民党の状況は、国内では芳しくない。理由はいくつかあるが、そのうちのいくつかは以前NEOでも取り上げたことがある。特に、岸田文雄外相と上川陽子外相が海外に出発する直前に行われた衆議院議員補欠選挙(3議席)の結果には、それが反映されている。野党の立憲民主党は、すでに岸田文雄内閣不信任案を国会に提出する意向を表明している。

一方、自民党内では、現政権に対する国民の否定的な態度を背景に、数ヶ月前から水面下で党首を交代させる「予防措置」の必要性が議論されてきた。1年半後に迫った次の国会議員選挙を前にして、この話は時事的な重要性を帯び始めている。同じような状況、同じような形で、岸田文雄氏自身が2021年秋に党首・政権トップに就任したことを思い出すべきだ。

自民党新代表の後任には、10年代末に1年間首相を務めた麻生太郎氏や、同じ上川陽平氏など複数の候補が検討されている。前者が最近、後者について「美人とは呼べない」と公の場で失言したのは、水面下での争いのせいだろうか。現職を含め、さまざまな役職に就きながら、精力的で有能な役人としての地位を確立してきた上川陽子。このことは、国家最高職の候補者(の可能性)の選考において、間違いなく重要な意味を持つだろう。その間、岸田文雄と上川陽子は現職に留まった。

彼らの退任前夜には、毎年更新される「外交青書」が完成していた。この文書の根底にあるテーゼは、「自由、民主主義、法的に確立されたルールに基づく世界秩序がさらされているリスク」という欧米のプロパガンダのミームに集約される。そのような「リスク」の具体的な原因は、主にウクライナに対する「ロシアの侵略」、エスカレートする中東情勢、そしてその他いくつかである。さらに後者として朝鮮民主主義人民共和国と中国が挙げられている。

しかし、中国に関しては、「共通の戦略的利益に基づく中国との互恵的関係」を構築する必要性についてのテーゼが、重要なフレーズの一つとして登場していることに、コメンテーターたちは注目している。その一方で、中国の軍事的発展のあり方については「警戒を怠らず」、日本が米国と軍事的・政治的に同盟を結ぶことの「礎石」としての重要性を改めて述べている。

このテーゼが日本の主要な外交文書に掲載されているという事実そのものが、国際舞台における日本の独立的な位置づけがますます強まっていることの強力な証拠である。とりわけ、何十年もの間、前例のない重要な同盟国の政治的混乱の結果が不透明であることが、その動機となっている。このような状況下で、東京は国益を確保する過程でますます自国に頼らざるを得なくなっている。

日本に不足している天然資源を国内経済に供給するという同じ問題が、(1世紀半前と同じように)再び主要なものの中に含まれている。しかし、「グローバル・サウス」は資源に非常に恵まれており、そこでの地位をめぐる争いは、次第に世界の主要なプレーヤーたちの注目の的になりつつある。そしてこの争いの中で、東京は「伝統的」な「ひじを出す」立場を取り始めている。このポジションには、同じ岸田外相と、上川前首相を含む3人の閣僚がいる。上川の前任者である林もその一人である。

同時に、この立場が、グローバル・サウスで長らくほぼ主要な地位を占めてきた中国との「互恵関係」という前述のテーゼとどのように調和するのかは、依然として不明である。いずれにせよ、日本の首相と外相の最近の外遊日程には、中国にとって非常に敏感な「参照点」が含まれている。

ラテンアメリカの「参照点」に関しては、岸田外相のブラジル訪問はコメントするまでもないだろう。ブラジルはラテンアメリカの主要国であり、グローバル・サウスでも最も重要な国の一つであり、BRICSのメンバーとして権威を高めつつある。ブラジルは今年11月にG20サミットの議長国を務めるが、同国のルーラ・ダ・シルヴァ大統領は、日本の首相が到着する前から、東京との包括的な関係を発展させる用意があると語っており、岸田外相との会談の結果を見る限り、その期待は極めて妥当なものだった。

その後の岸田外相のパラグアイ訪問については、もう一言付け加えるのが適切だろう。人口(720万人、ブラジルの2億2千万人)、面積ともに小さいこのラテンアメリカの国が、大陸で唯一、台湾問題をめぐる駆け引きに巻き込まれたのだから、現代の世界秩序の中で最も危険な国の一つであり、何らかの形で巻き込まれている。後者は現代の世界秩序の中で最も危険なもののひとつであり、すべての世界の大国が何らかの形で関与している。もちろん日本も含まれる。

パラグアイは確かに小さいが、台北との外交関係を維持している12カ国の中では最大の国である。そして非常に積極的だ。特筆すべきは、サンティアゴ・ペーニャ現大統領が当選後(就任前)初めて行った国際活動が、昨年夏の台湾訪問であったことだ。

その2ヵ月後には、台湾の頼清徳副総統が就任式のために台湾を訪れた(国際的な騒ぎを伴って)。今年5月20日には、彼自身が総統に就任する。アスンシオンで行われたペナ大統領と岸田外相の会談に関する簡単なコメントには、この件に関する記述はない。その一方で、この手続きそのものは国際政治において非常に注目すべき出来事となることが約束されている。

最後に、岸田首相の今回の海外出張の始まりであるフランス訪問について触れないわけにはいかない。これには2つのイベントが含まれていた。ひとつは、上川外相を含む多くの閣僚とともに、経済協力開発機構(OECD)の定例会議に出席したことだ。このクラブは38カ国(主に欧米)で構成される一種の権威あるクラブである。

しかし、岸田首相のパリ訪問の主な内容は、このセレモニー的なイベントではなく、フランスのエマニュエル・マクロン大統領との会談だった。フランスはドイツとともにEUを率いている。一方、対EU関係における中国と日本のポジション争いは、ますます目に見えるものになってきている。実は、この会談に関する読売新聞の論評の見出しには、すでに中国要因が示されている。

同じ要因は、ここで取り上げた日本の政府高官2人の次の海外出張が終わった瞬間に一気に感じられた。5月5日から始まった習近平国家主席の欧州3カ国歴訪である。

しかし、この非常に注目すべき外遊は、もちろん別の解説に値する。

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