マイケル・ハドソン「文明の命運」p.189

レンドリース法とブレトンウッズ体制:アメリカの経済支配の対抗者を阻むもの

最初の争点は、イギリスの戦費調達のためのアメリカのレンドリース法をめぐるものだった。レンドリース法の基本理念は自由貿易であった。マルチラテラリズムと呼ばれたそれは、アメリカの立場からすれば国粋主義的であり、無差別の対外貿易を厳格に約束し、イギリスとその植民地およびイギリス連邦内の旧植民地との間の特恵関税制度である「イギリス帝国優先主義」を廃止せよということであった。

この保護主義的な制度を廃止することで、イギリスやヨーロッパの植民地の原材料資源や輸入市場は、当然アメリカを筆頭に隅々まで開放されることになった。イギリスが武力で中国を開放したのに対し、アメリカは、イギリスが戦時中で困窮している時に、「金か命のいずれを取るか」という申し出で、イギリスとその帝国を開放したのである。第7条2項は、「国際商業におけるあらゆる形態の差別的取扱いの撤廃、(3)関税及びその他の貿易障壁の削減」を求めていた。1941年7月28日、第7条の草案を渡されたケインズは、「アメリカの政策なかで、本質的な同盟国について、関税の引き下げと戦後の深刻な不況の回避については全く何も書かれていない」と指摘した。