「中国の電気自動車」に対するアメリカの戦争

アメリカの産業は後れを取っているが、バイデンは2024年の選挙に勝つために保護主義を利用するだろう

Timur Fomenko
RT
3 Mar, 2024 01:08

バイデン政権は中国の「スマート・カー」の調査に乗り出すと発表し、アメリカの自動車産業を守ることを誓った。お決まりのように、ホワイトハウスはこの車を「国家安全保障上の脅威」と決めつけ、データを中国に送信できると根拠もなく主張した。

もちろん、熟練した善意の観察者であれば、「国家安全保障上の脅威」というレトリックは、ある中国製品やサービスをブラックリストに載せ、アメリカ市場から排除するために、しばしば根拠もなく、正当化の前提として常に使われることを知っているはずだ。それゆえ、他の中国企業のなかでもファーウェイも同様の扱いを受けてきた。

このレトリックはしばしばヒステリックに近い。最近の例では、フロリダのリック・スコット上院議員が、中国から輸出されたニンニクは国家安全保障上の脅威だと発言した。これは異常な例かもしれないが、テクノロジーに関しては、中国からのあらゆるものがスパイ行為として非難されるのが普通であり、パラノイアという政治的コンセンサスがこのような厳しい政策措置を正当化するために使われている。

実際のところ、バイデン政権の外交政策は、北京がグローバル・バリュー・チェーンを上昇させ、主要産業におけるアメリカの優位性を侵食するのを阻止し、アメリカの覇権を弱体化させるために、中国の技術的・産業的進歩を阻止しようとするものだ。最も顕著なのは、ホワイトハウスが中国の半導体産業を潰そうとしていることで、輸出規制の規模を拡大し続け、中国企業から先端半導体や関連製造装置へのアクセスを奪おうとしている。ジェイク・サリバン米国家安全保障顧問は、これを「小さな庭、高いフェンス」戦略と呼んでいる。

アメリカは自動車産業に関してあらゆる面で保護主義的なことで有名であり、そのことで敵にも味方にも厳しい。ここ数年、再生可能エネルギー産業を推進する政治的な動きがあり、世界中で電気自動車、バッテリー、ソーラーパネルなどの需要が急増している。その結果、中国は再生可能エネルギーの単一メーカーとしては世界最大の輸出国となり、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。中国製電気自動車の需要は急増している。

米国ではすでに中国製自動車に25%の関税が課せられているが、電気自動車は競争力があり価格も安いため、抑止力にはほとんどならず、その数は増加の一途をたどっている。それだけでなく、中国はメキシコで自動車の製造を開始することで抜け穴を利用し、北米自由貿易協定(NAFTA)の枠内で自動車を製造できるようにしている。このことはバイデン政権に政治的圧力をかけている。バイデン政権は選挙を控えており、今後数カ月は中国に対して強硬な姿勢を示すことになるだろう。

というのも、バイデン政権が直面する政敵は、中国に対してさらに厳しくなることを求めており、前大統領時代にすでにアメリカの経済政策を保護主義へと方向転換させた人物だからだ。言い換えれば、バイデンはトランプ自身を相殺するために、トランプ主義的な経済思想にリップサービスをするよう政治的に圧力をかけられることになる。アメリカの労働者の票を得るためには、彼がアメリカの雇用のために戦っていることを示す必要があり、したがって中国の電気自動車をターゲットにすることが議題になるだろう。ミシガン州のような主要な自動車製造州は、トランプ氏にとって選挙の勝敗を左右する可能性があり、これが2016年の選挙でヒラリー・クリントンを敗北に追いやったことを付け加えてもいいかもしれない。

もちろん、そのせいでホワイトハウスも、北京が電気自動車やスマートカーを遠隔操作して米国の道路やシステムを遮断する、などと反中ヒステリックに飛び込んでいる。中傷、恐怖、ヒステリーを利用して政策への同意を取り付けるのはアメリカ政治の特徴である。そのため、2024年第1四半期は米中関係が高いレベルで平穏であったとしても、今年は2020年のように、新型コロナのパンデミックというさらに混沌とした状況がないとはいえ、波乱に満ちた予測不可能な年になることが予想される。しかし、いずれにせよ、マクロレベルでは、米国もまた中国に世界の産業やバイデンの言うところの「未来の技術」を支配されたくないと考えている。したがって、米国は電気自動車の製造では中国を大きく引き離しているが、自国の市場を守るために対策を講じる可能性が高い。

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