マイケル・ハドソン「超帝国主義」p.440

企てられたTTPとTTIPの企業権力奪取

バラク・オバマ政権(2009~16年)のもとで大統領職と議会を奪還した民主党は、2つの新自由主義的貿易協定を提案した。太平洋諸島12カ国との環太平洋パートナーシップ(TPP)と、ヨーロッパとの環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)である。両条約には、外国人投資家の利益を損なう可能性のある規制を制定する政府の権限を制限する急進的な提案が含まれていた。

アメリカをはじめとする多国籍企業は、公衆衛生、福祉、環境を破壊したことに対するいかなる責任からも解放されることになっていた。投資家対国家の紛争解決(ISDS)法廷が創設され、公害の罰則を課された企業や、公共の利益とみなされるその他の規制によって利益を減少させられた企業に対して、100%の完全な返還を行う権限を他の政府に与えることになった。石油流出やその他の環境・経済・社会規制にもかかわらず、である。ISDSの裁判官は、企業の社会的・経済的に破壊的な行動が経済全体に及ぼす影響を考慮することなく、政府の利益よりも企業の利益が優先されるように、企業の任命権者が任命されることになっていた。

これらの提案に対抗するために結成されたグループExposeTheTPP.orgは、経済学者スーザン・ジョージがISDS投資法廷を「洗練された、有害なアメリカ主導の企業ラケット、環境、動物福祉から労働者の権利に至るまで、スペクトルを横断する協調的攻撃」と説明していることを引用した。同団体はこう指摘する:

政府が勝訴した場合でも、1件あたり平均800万ドルにものぼる法廷費用や弁護士費用を支払わなければならないことが多い。...現在進行中の投資家対国家の攻撃には次のようなものがある:

  • シェブロンによるエクアドル・アマゾンの有毒物質汚染に対する責任を回避;
  • フィリップ・モリスによるオーストラリアのタバコ表示政策への攻撃;
  • イーライリリーによるカナダの医薬品特許政策への攻撃;
  • 複数のヨーロッパ企業による、革命後のエジプトの最低賃金引き上げや、アパルトヘイト後の南アフリカのアファーマティブ・アクション法への攻撃。