マイケル・ハドソン「文明の命運」p.227

米国は、自国の外交・内政に対する外国の支配を排除する拒否権を持たない限り、いかなる国際外交・法制・経済機構にも参加することを拒否してきた。第一次世界大戦後、国際連盟に加盟しなかったのもそのためであり、国連に加盟する際も、拒否権を持つことを条件としていた。1944年から45年にかけての世界銀行とIMFでも、アメリカの国益を反映していないと思われる政策を阻止するのに十分な票を与えるために、アメリカの定数を高く設定することで同様の拒否権を獲得している。

アメリカの拒否権に従うことで、国連はアメリカの戦争犯罪を罰することも、各国に対する生物兵器(アメリカはベトナムでエージェントオレンジを、コロンビアで同様の発がん性毒物を使用)、環境破壊(石油流出と汚染)、イラクなどアメリカの戦略家が資源を奪おうとする国への侵攻を止めることもできない。その結果、国際法のルールから免責されると自称する米国が、与えた外交約束を破ることで、ウラジーミル・プーチンの言葉を借りれば、米国は非合意主義者になってしまった。

実際、米国の外交は「商談ご破算の芸術」と呼ばれるかもしれない。前述した共和国初期のアメリカ先住民族との土地条約から、1990年にソ連がドイツ統一に合意すればNATOを拡大しないという米国の約束、トランプ大統領のイラン協定からの離脱からパリ気候協定まで、そして米国が アイゼンハワー政権の弾道ミサイル協定からの離脱から、2002年の対弾道ミサイル条約、2019年の中距離核戦力条約まで、米国はどんな契約にも応じる義務を感じない。

したがって、米国が現代のウェストファリア条約に同意することはほとんど期待できない。この条約は、レント抽出機会の民営化を求める外国の資金需要から国を保護し、これらの経済需要を追求するための外国為替レートへの攻撃、貿易制裁、その他の経済強制の手段の脅威を暗黙的に違法化する。このような国家主権の原則は、発表された米国の外交政策に反している。イラク侵攻を支持した米国の最も過激なタカ派が支持するシンクタンク、新米国建設計画(PNAC)は、米国の国際関係の基本理念をこう称している。

(続く…)