マイケル・ハドソン「文明の命運」p.257

一方、米国で最も裕福な1パーセントの人々は、ウイルスが始まった後の12ヶ月間に、保有する株式や債券が1兆ドル増加した。その結果、1パーセントの富裕層は上昇し、99パーセントの富裕層は下降するという、K字型の経済が生まれた。住宅所有者や株主は、住宅や株式市場の価格が上昇すれば、自分だけでなく経済全体が豊かになっていると思い込んでいる。しかし、2006年以降、米国の住宅所有率は低下し、住宅ローン債務が住宅所有者の自己資本を上回っているのが現状である。銀行は、家賃の上昇を、負債価格比の高い銀行融資の拡大として資産化し、住宅への融資を増やすことで物価上昇に拍車をかけている。負債による不動産価格のインフレは、銀行と投機家を豊かにしたが、負債デフレが進行する中、ほとんどの住宅所有者は、自宅の市場評価額に対して少数派の債権を持つにとどまった。

国や地方の財政も、不動産価格の上昇を分かち合うどころか、苦しくなっている。交通機関やその他の設備への公共投資は、沿線や好立地の不動産所有者の地代を上昇させているが、この地代を上昇させる公共的な整備にかかる費用を回収するために、地代に課税することは行われていない。土地所有は、最小限のコストで居住するための公共的なニーズとしてではなく、レントを引き出すための投資手段や銀行融資の市場と化しているのである。

レンティア問題が蔓延している。米国の教育の金融化は、労働力になる前から負債依存に陥る学生負債の踏み絵を作り出し、高等教育を通じて上昇志向を実現する伝統的な方法を事実上封鎖している。大学の学位は金融化された商品となり、教育は公共の権利として自由に提供されるのではなく、学生の負債を膨らませることで支払われるようになった。海外の「社会化医療」とは対照的に、民営化された健康保険の高額な費用を労働者とその雇用主が負担している。自称実力主義が台頭し、信託基金を通じて富を受け継ぐことを主な根拠とし、関連する寡頭制の相互扶助的な教育・雇用ネットワークが形成されている。