そのため、政府は自分たちで作れない通貨で借金をするべきではない。政府は自国通貨建てで借金をすることで、倒産の危機から身を守ることができる。そして、1920年代のドイツのような事態を避けるために、国際金融のルールは、いかなる政府も、緊縮財政を課し、経済を二極化する代償として債権者に支払うことを義務付けられてはならないという基本原則を採用すべきである。
政府の貨幣創造を批判する人々は、銀行の信用が強いインフレを引き起こすという事実を軽視しているが、それは主に資産価格、商品とサービスの消費者価格を上昇させるものである。商業銀行は、主に資産の購入者のために信用を創出する。アメリカやイギリスの銀行融資の約80%は、不動産の購入者向けで、不動産は担保として差し入れられ、その賃料や利益が銀行に利息として支払われる。こうして銀行は、経済の地代の大半を利子として受け取るようになった。
金利は、税金と同じように、経済から購買力を吸収する。また、後述するように、銀行の信用創造による資産価格のインフレは、生産・消費部門における債務のデフレをもたらす。住宅などの資産価格を信用で競り上げると、生産・消費に回す資金が少なくなる。
2008年以降、米国とユーロ圏の中央銀行が量的緩和を実施し、銀行準備金を供給して金利をほぼゼロにし、債券、不動産、株式の価格を下支えしてきたのは記憶に新しい。新自由主義政府は、産業経済、つまり生産と消費の実体経済を支えるためにMMTを使うことを拒んでいたが、レンティア部門の成長に資金を供給するためにMMTを使うことができることを知ったのである。
II. レント抽出FIREセクターと生産的価値創出経済との比較
ポスト古典派イデオロギーは、賃金と利益の循環的な流れ、すなわち生産と消費の経済が、金融・保険・不動産(FIRE)部門とその兄弟である天然資源レントを抽出する石油・鉱山部門、独占レントを得る部門に覆われていることを認めないようにしている。これらの経済レントは、現実の「生産物」ではなく、特別な特権(文字通り「私法」)の結果として経済から引き出される移転支払いである。
図表 12.4 と 12.5 は、政府、金融機関、「実体」経済を通じた信用の供給と債務返済の相互流出入を追跡したものである。
(図表 12.4 と 12.5 は省略)