マイケル・ハドソン「文明の命運」p.201


1648年に締結されたウェストファリア条約は、ヨーロッパの血なまぐさい30年戦争に終止符を打ったが、この条約の現代版として、国家としての基準が最終的に問題になっている。この条約は、国家は他国の政治や内政に干渉してはならないことを定めている。問題は、政治的・経済的な独立である。国内問題に対する外国の干渉を防ぐことによって自らの運命をコントロールするのか、それとも今日の金融「市場」のジレンマ、すなわち 「金を取るか、命を取るか」 に直面するのか、ということである。

米国の金融外交は、長年にわたる国際関係の1648年の原則を否定し、世界の貿易と投資外交をコントロールする米国の一方的な要求に置き換える一方で、自国の政策に対する外国の支配や非難から免れる拒否権を持たない限り、いかなる国際機関への参加も拒否している。だから、第一次世界大戦後、国際連盟への加盟を拒否し、拒否権を持つことを条件に国際連合への加盟に同意した。1944年、世界銀行とIMFに参加する際にも、米国の代表が国益を反映しない政策決定には拒否権を行使できるよう、米国の割当枠を高く設定し、同様の権限を確保した。この論理は、米国が世界法廷に参加しないことにもつながった。

伝統的な「ルールに基づく秩序」の茶番で、米国は他国の国内政策や外交政策のルールを一方的に決める権利を主張しているのだ。2021年3月18日、アラスカ州アンカレッジで米中両国の高官が対立し、事態は収拾に向かった。アントニー・ブリンケン国務長官は、米国の制裁、他国の選挙への政治介入、独裁者やクライアント寡頭制、新自由主義のクレプトクラシーを支援する軍事交戦こそが、世界の新「ルールに基づく秩序」の本質であると、事実上、描き出したのである。実質的には、中国の国内政策が、自国の産業に補助金を出し、民営化を控えることで、この米国中心の新自由主義秩序を脅かしていると非難したのである。「ルールに基づく秩序の代替案は、力が正義となり、勝者がすべてを手にする世界であり、それははるかに暴力的で不安定な世界となるだろう 」と主張したのである。