マイケル・ハドソン「文明の命運」p.216

オバマ大統領は、ロシア最大の外国人株式投資家であったエルミタージュ・ファンド元代表のビル・ブラウダーを支援し、ブラウダーの弁護士であり、金融詐欺で投獄されたセルゲイ・マニツキーにちなみ、マニツキー法を提唱した。欧米の対ロシア制裁は、表向きは「民主主義」を守るために行われたが、暗黙のうちに、民主主義には、顧客のクレプトクラシーによる脱税やマネーロンダリングの自由も含まれると定義されていた。

戦時中の鎖国や関税のように、米国とNATOのロシアに対する貿易制裁の効果は、国内生産を促進するものであった。例えば農業では、リトアニアなど外国産のチーズの輸入に代わってロシア独自のチーズ生産が発展し、世界有数の穀物輸出国になった。また、ロシアの主要輸出品である石油やガスを遮断するために、アメリカの支援による制裁が行われている。第7章で述べたように、アメリカはドイツに圧力をかけ、パイプライン「ノルド・ストリーム2」による低価格のロシア産ガスの供給を阻止しようとし、ヨーロッパには、アメリカの液化天然ガス(LNG)をはるかに高い価格で輸入するための輸送ターミナルの建設に推定10億ドルを計上するように主張した。

アメリカ、ロシアを倒したように中国の打倒を目指す

ロシアと他の旧ソビエト連邦の経済的解体を受けて、ブレジンスキー元国家安全保障顧問は、「少し前まで脅威的な超大国の経済的、政治的運命は、今や事実上の西側の管理下に置かれることが多くなっている」と騒いだ。中国がソ連と同じように騙されやすく、新自由主義的な政策を採用し、富を民営化してアメリカ人に売り渡すかもしれないというアメリカの希望は、このような設定にあった。第6章にあるように、レーガン政権の元通商顧問であるクライド・プレストウィッツは、最近、その希望を明言した。「2001年に中国を自由貿易機関(世界貿易機関)に迎えたとき、自由世界が期待したことは」、「1979年に鄧小平が一部の市場手法を採用した時から、特に1992年のソ連崩壊後は、中国との貿易や対中投資の増加は必然的に経済の市場化、国有企業の終焉をもたらすだろう」ということであった。