日本「半導体産業への支援を強化」

電気自動車用パワー半導体を支援する最新の補助金を補完する税制優遇措置

Scott Foster
Asia Times
December 14, 2023

日本の与党・自由民主党は、来年施行される予定の税制改革大綱に、半導体産業などに対する10年間の優遇措置を盛り込む予定だ。

一方、経済産業省は、半導体メーカーのロームと東芝の電気自動車(EV)や産業用パワーデバイスへの共同投資に補助金を出すことを決めた。

半導体に加え、電気自動車とバッテリー、バイオマスから作られる持続可能な航空燃料、再生可能エネルギーで生産される鉄鋼、バイオマスとリサイクル廃棄物から作られる化学製品という、戦略的かつ環境に優しいとみなされる4つの産業にも減税が行われる。

これらの産業は、日本が国際競争力を持つために必要な技術を有する、成長が見込まれる産業である。半導体の場合、世界各国で政府による振興策が盛んに行われているため、日本も同様の措置を講じる必要がある。

対象となる半導体メーカーは、最大20%の法人税減税が受けられるとされ、減税額は生産・販売量によって異なる。企業が純損失を出した場合、減税措置は最長3年連続で翌年度に繰り越すことができる。

企業は2026年3月期末までに事業計画を提出し、認定を受ける。補助金は企業の計画が受理されてから10年間継続される。

岸田文雄首相は、多額の初期投資を必要とし、操業コストが高い産業を支援する制度が好ましいと述べている。そのため、日本の国会は11月29日、半導体産業への補助金2兆円強(約140億米ドル)を含む補正予算を可決した。

これは経済産業省が要求していた3兆4000億円には満たないが、昨年度半導体産業に割り当てられた1兆3000億円よりは多い。

資金の行方

2兆円のうち、約三分の一にあたる6500億円以上が、日本企業のコンソーシアムによって設立された新興の集積回路(IC)ファウンドリー、ラピダスに使われるが、TSMCの先端プロセス技術に追いつくことを期待されている。これにより、ラピダスの北海道新工場に対する政府の支援総額は約1兆円となる。

さらに、TSMCの九州での第2工場建設にも数千億円が提供され、台湾トップクラスのファウンドリーの日本事業への支援総額は同じく1兆円に達する。

また、宮城県に工場建設を計画している台湾の小規模ファウンドリーであるパワーチップ社、広島にあるDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)工場のアップグレードのためのマイクロン・テクノロジー社、日本で行われているIC組立とパッケージングの研究開発に対するインテル社にも補助金が支給される。

最近では、12月8日にロームと東芝がパワー半導体の生産で協力する計画が、日本における半導体の安定供給を支援する施策として経済産業省に正式に認められたと発表した。

両社は、炭化ケイ素(SiC)パワーデバイスとシリコン(Si)パワーデバイスにそれぞれ投資し、相互の設備を適宜活用しながら、補完的に生産・供給能力を強化する。

ロームは、電気自動車や産業用アプリケーション向けのSiCパワーデバイスに特化している。東芝は電力・産業・車載関連のSiパワーデバイスに強みを持つ。一方では重複が少なく、他方では研究開発や市場開拓における協業の可能性がある。ロームは東芝の民営化に3,000億円を投資しており、競争相手というよりむしろパートナーとなっている。

ロームと子会社のラピスセミコンダクターが2892億円、東芝電子デバイス&ストレージと加賀東芝エレクトロニクスが991億円、合計3883億円を投資する計画だ。補助金の上限は投資総額の3分の1に当たる1,204億円。

ロームは九州・宮崎の新工場でSiCパワーデバイスと基板(ウエハー)の生産に集中する。東芝は、石川県の加賀新工場でSiデバイスの生産に集中する。

ロームは、SiCの新標準である150ミリウェハーから200ミリウェハーへの生産移行を進めている。加賀工場は300ミリを処理するように設計されており、競争力のあるスケールメリットが得られるはずだ。

シリコンに比べ、炭化ケイ素はエネルギー効率と信頼性が高い。その利点には、より高い電圧への耐性、より広い温度範囲と振動への耐性、より長いデバイス寿命などがある。炭化ケイ素は現在、電気自動車のパワートレインやバッテリー充電、その他の要求の厳しい用途で、基本的なシリコンに取って代わりつつある。

ロームは来年、日本で200ミリSiCウェハーの製造を開始する予定である。宮崎は、2009年に買収したドイツのSiCrystal子会社を補完する国内初のSiCウェハー生産拠点となる。EVの需要が高まり続ける中、SiCrystalは欧州での需要対応で手一杯になる可能性が高い。

ロームはSiCパワーデバイスとウエハーの両方を急ピッチで増産する計画で、今期は合わせて400億円、2026年3月期は1300億円、2028年3月期は2700億円の売上を目指す。各種市場調査機関の予測が正しければ、同社は10年後までに20%近い世界シェアを獲得することになる。

ロームの経営陣は、9月までの半期決算発表後のアナリストの質問に対し、SiCパワーデバイスの販売は計画通りに進んでおり、その約9割が日本以外での販売であると述べた。現在、ロームのSiCパワーデバイスの最大の市場は中国であり、次いで欧州、米国となっている。

今後数年間は、欧州、米国、日本での売上比率が上昇するものの、中国を含む全市場での売上が増加するとロームは予測している。これを念頭に、ロームはすでに中国製SiCウェハーの使用を検討している。

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