「ユーラシア大陸通過の有望な要素」-イルティッシュ国際輸送ルート


Boris Kushhov
New Eastern Outlook
13.03.2024

2023年、カザフスタンのカスピ海港の貨物量は10%近く増加し、650万トンとなる。それでも最大積載量の2100万トンにはほど遠い。とはいえ、カザフスタンの指導者たちは、カスピ海の北部がさらに浅くなった場合に、カスピ海の輸送能力が制限されることを懸念している。

このような事態が発生した場合、大きなコストがかかることが予想される。この点で、カザフスタン当局は、中回廊(ТМТМ)の開発と浚渫に加えて、河川輸送による新たな輸送ルートの開拓にも力を入れている。

カザフスタンの航行可能な水路の総延長は、イルティッシュ、ウラル・カスピ海、イリ・バルハシュの3つの流域で2100kmに達する。2023年の貨物輸送量は約160万トンで、カスピ海の港を通過する貨物の4倍である。このような理由から、カザフスタンにおける河川輸送の国際的なトランジットの可能性は未開発のままである。

2023年12月11日に開催されたアバイ地方議会の会議では、イルティッシュ川における国際航路の復活の妥当性についての問題が提起された。2023年12月12日に開催されたカザフスタン共和国政府の会議で、カザフスタン当局が河川輸送ルートのプロジェクト推進に関心を持っていることがすでに明らかになった。 このプロジェクトが実施されれば、河川を利用した最大250万トンの貨物輸送が可能になる。2027年までに、カザフスタン当局は河川輸送量を460万トンに増やす計画である。

これらの計画で計画されている工事には、セメイの新船積み閘門の建設、オスケメン閘門の改築、バフタルミンスク閘門とシュルビンスク閘門の改築、新港と新鉄道路線の建設、浚渫工事などが含まれる。

イルティッシュ輸送ルートは、カザフスタン・ソビエト連邦とロシア連邦を結ぶ重要な輸送大動脈としてソビエト連邦時代に存在していたように復活させることができるだけでなく、現在の現実においては、ロシアと中国を結ぶ新たな輸送・インフラ要素になりうる。カザフスタンの2大隣国を結ぶために、ザイサン湖畔のトゥギル村の近くに港を建設し、そこから中国との国境を越えるメイカプシャガイ地点まで100kmの鉄道を建設し、中国のジェミナイ村まで結ぶことが計画されている。しかし、この新線と中国の鉄道網を結ぶには、全長200キロの幹線鉄道を中国領内に建設しなければならない。

イルティッシュ回廊が成功すれば、中国北西部とシベリア鉄道の沿線にあるロシアの都市オムスクを結ぶことになる。さらに、イルティッシュ回廊は中国と北洋航路を結ぶ最短かつ最も効率的な航路のひとつになるかもしれない。 中国における氷のシルクロード構想の推進は、中国がこのような航路に強い関心を持っていることを示しているのかもしれない。

2024年初頭の時点で、このプロジェクトはカザフスタンの計画文書にはまだ含まれていない。しかし、今年はその見通しについて議論・研究し、中国およびロシアと詳細について合意し、開発の予備段階がすべて成功裏に完了した場合には、プロジェクト・パスポートを作成する予定である。

イルティッシュ・ルートのほかにも、カザフスタンでは、ウラル・カスピ海ルートの容量を増やすためのアティラウ河川港の近代化など、河川輸送プロジェクトが計画されている。

このように、カザフスタンは、カスピ海横断から河川輸送に至るまで、あらゆる水運プロジェクトを推進しながら、通過機会を最大化しようとしている。

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