マイケル・ハドソン「文明の命運」p.200

ドル覇権への抵抗

すべての経済は外貨準備を必要とする。ドル準備高は米国の債務であり、主に米国の軍事費、冷戦外交、天然資源レントや公共インフラの民営化による独占レントへの投資を筆頭とする外国経済への投資買収によって供給されるものである。

外国にとっては、米国の軍事・投資買収によって流入するドルからいかにして身を守るかが問題であり、その対価は単なる「ペーパードル」である。前述のように、米国の軍事政策と経済資産の買収の組み合わせを認めない国は、ジレンマに直面する。ドル資金を米国資本市場に還流させなければ、自国通貨が上昇し、自国の輸出品が世界市場から排除される恐れがある。

ロシアや中国をはじめとする一部の黒字国は、脱ドル政策に踏み切っている。その一環として、国際収支の赤字を解消する手段として、金を復活させようというのである。金は、バランスシートの反対側に負債を持たない純粋な資産であるため、ドル覇権を支える米国の財政赤字や支払い赤字の資金源にはならない。代替通貨圏への移行においては、赤字の決済に金を使うことが最もスムーズな道筋になると思われる。

第三世界の債務国にとって問題は、1920年代にドイツの賠償金と同盟国間の武器債務がヨーロッパ経済を破壊したように、債権者の要求によって経済が破壊されることをいかに避けるかである。IMFや米国の外交は、金利を下げる、償却を遅くする、予定された債務を支払うのに十分な額を貸すなど、わずかな緩和策を提供するだけである。しかし、債務の累積が進むと、最終的には債務の帳消しが唯一の解決策になる。そのためには、「いかなる国も、外国債権者への支払いのために自国経済を破壊することを強いられてはならない」という国際法の新たな原則が必要となる。その原則は、債権者保護法が戦争行為と同様の朝貢的要求であることを認識するものである。

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ついに、200ページ到達。残り83ページ。
といっても、1日1ページずつ翻訳すると、まだ3か月近くかかります。
さすがに全訳をネット上に掲載するのは問題がありそうなので、昨年9月から今年1月まで、約5か月分は非公開にしました。