マイケル・ハドソン「超帝国主義」p.448

ケインズは1944年のブレトンウッズ会議で、多極的な国際金融システムを提案した。バンコール(bancor)は、国際収支が赤字の国々が自虐的な緊縮財政を強いられなくて済むように、世界的な中央銀行が融資を行うフラットマネーとして発行される予定だった。しかし、ケインズ自身が指摘したように、そのような体制はまだ機が熟していなかった。イギリスとその帝国もヨーロッパも、米ドルとアメリカの金保有に基づかない国際通貨と信用を受け入れる用意はなかった。

今日、最終的に問題となっているのは、中国とロシアが、生活とビジネスのコストを最小限に抑えることを目的とした代替手段をいかに率先して作り出せるかということである。国家レベルでは、金融化とそれに伴う民営化、新自由主義的な富裕層優遇税制を否定する必要がある。この目的は、国内通貨制度と中央銀行政策を構築し、工業化、公共インフラ投資、労働力の向上を促進する一方で、レンティア所得に課税することで達成される。インフラを民営化し、レントシーカーに売り払おうというアメリカの要求とは正反対だ。国際的には、ドル外交の軍事的冒険主義と新自由主義的要求を可能にする、財務省証券本位制とその結果としてのアメリカのフリーランチを回避する金融システムが必要である。

ドル圏の財務省券本位制(そして、アメリカが国際法や条約を無視して、意のままに金融制裁を課す潜在的な能力)に代わるものを作るために、中国、ロシア、その他の国々は、ドルを金に置き換え、互いの通貨を相互に保有しようと動いている。決済手段としてある程度まで金を使うことが望ましいのは、主にアメリカやNATOの軍事支出を抑制するためであり、実際に、将来世界の覇権を狙ういかなる国の軍事支出も、軍事的冒険主義の代償として各国に通貨準備を枯渇させることによって抑制することができる。アメリカの外交圏外に設立される新しい国際中央銀行は、ケインズが不換紙幣のバンコールで提案した、貿易赤字(ただし軍事支出やその他の国際収支の悪化は除く)をファイナンスするための、ある種のバージョンを作るかもしれない。

アメリカは間違いなく、このような脱ドルや、ドルの信用や新自由主義的な金融哲学に依存しない代替的な国際金融システムの創設に抵抗しようとするだろう。しかし、アメリカの好戦的な制裁の脅しや政権交代の試みは、離脱を加速させるだけだ。金融化された自国経済が深刻な非工業化を遂げるなか、アメリカの外交官が戦争や政権交代以外で何ができるかはわからない。経済の二極化とレンティア利得を謳歌する新自由主義イデオロギーを推進する「非対称戦争」を除いては。
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『超帝国主義』の翻訳も残すところ1ページ弱。