「ゾンビ化するフォルクスワーゲン」-長年の愚かなドイツ政府の政策の結果


Ilya Tsukanov
Sputnik International
7 September 2024

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは、ヨーロッパの自動車産業が直面している「深刻な状況」の中で、工場の一部を閉鎖するという歴史的に前例のない緊急措置を取らざるを得ないかもしれないと発表した。この発表は、ブリュッセルとベルリンによる長年にわたる無謀な政策の結果だと、連邦議会議員のディルク・スパニエル氏はスプートニクに語っている。

フォルクスワーゲンは、エネルギー価格の高騰、中国との競争の激化、欧州連合(EU)レベルの政策が同社や他のドイツの自動車メーカーから競争上の優位性を奪っている中、自動車製造の巨体を健全な財政状態に戻すため、工場閉鎖、労働組合と合意した従業員保護の打ち切り、その他のコスト削減策を検討している。

フォルクスワーゲンのオリバー・ブルーメCEOは今週初め、「ヨーロッパの自動車産業は非常に厳しく深刻な状況にある。経済環境はさらに厳しくなり、新たな競争相手が欧州市場に参入してきている。特に製造拠点としてのドイツは、競争力の点でさらに遅れをとっている」と指摘した。

フォルクスワーゲンが90年近く前に創業して以来、前例のない地元ドイツでの工場閉鎖の可能性が出てきたのは、EUと中国の貿易摩擦が激化するなかでのことである。

「ドイツと欧州の産業は、中国との戦いに確実に負けるだろう。私としては、政治的に自動車産業の自殺を決意し、欧州市場から中国車を禁止することで『修復』しようというのは、まったく愚かな考えだ」と、連邦議会議員のディルク・スパニエル氏はスプートニクに語り、フォルクスワーゲンと欧州の自動車産業全体が現在置かれている厳しい状況についてコメントした。

「もし中国人がドイツやヨーロッパで自動車を売ることを許されなければ、おそらく他の製品も中国で課税されるだろう。これは、特にドイツのような輸出国にとっては、中国への輸出量の大幅な減少につながり、ドイツ市場やドイツ企業に影響を与えるだろう。確かに、これは中国との貿易戦争を仕掛けるには非常にまずい方法だ」と、ドイツのための選択肢の議会派閥のメンバーで、同党の交通政策スポークスマンのスパニエル氏は語った。

欧州自動車産業衰退の背景は?

「自動車製造はドイツの長い伝統です」とスパニエル氏は強調し、ドイツの競争上の優位性は、原材料や部品から、従来の内燃エンジンを搭載した自動車を生産する組立工場まで、フルサイクルで生産する能力を長年培ってきたことにあると指摘した。

「EUが内燃機関の禁止を決めたことで、今、状況は変わりつつある」とスパニエルは言い、欧州の自動車メーカーがEVを製造するために早急に体制を変えようと努力した結果、多大なコストがかかり、消費者が特に興味を示さない自動車の価格が上昇したと指摘した。

「ドイツの自動車メーカーとサプライヤーが、電気自動車の開発と市場投入のために過去何年もかけて投資した莫大な資金がある。このために多額の費用がかかり、ドイツの自動車産業は実際の生産やコスト削減に投資することができない。」

その上、新型コロナによって引き起こされた15~20%の市場下落の余波、エネルギー価格の高騰、そして現在ドイツ政府が直面している財政危機がある。ベルリンがフォルクスワーゲンの救済を検討する中、この巨大企業はますます「ゾンビのように」見えるとスパニエルは強調した。

「私の意見では、中国にとって電気自動車の製造は、内燃エンジンを搭載した競争力のある自動車の製造よりもはるかに簡単だ。内燃エンジンはドイツの優位性であり、ヨーロッパの優位性であった。中国にとっては、より安価な電気自動車を製造する方が容易であり、(エネルギーコストの面でも)中国の方がはるかに安い」とスパニエルは強調する。

このような環境では、「欧州の自動車メーカーは、電気自動車を目指すのであれば選択の余地はない。100%電気自動車にしたいが、中国との競争では不利になる。だから、中国車に(関税を)かけるという案を出しているのです」と、中国車を欧州市場から「事実上追放」する可能性がある。

ドイツ人にとって、国内の自動車工場が閉鎖され、大規模なレイオフが実施されることは「災難」である、とスパニエルは強調する。「そしてこれはおそらく、ドイツ政府がいかに機能不全に陥っているかを如実に示している」とAfDのスパニエル氏は総括した。

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